RISU_TOP.GIF - 4,722BYTES  菊原純一

修士論文:「色素ドープ液晶の自己位相変調効果の時間応答と画像処理の応用」

論 文 概 要

ゲスト・ホスト液晶は、大きな光学異方性をもつホスト液晶に様々な光機能性をもったゲス
ト分子を 組み合わせることが可能なため、光エレクトロニクス分野への応用が期待されてい
る。 ゲスト・ホスト液晶中での光熱効果による非線型光学効果は、低いビームパワーで大き
な屈折率変化を起こすことが 可能であることから、実時間ホログラムの記録、焦点可変レン
ズ等といった応用が考えられる。 これらの応用を考えていく上でも、ゲスト・ホスト液晶中で
の光熱効果による非線型光学効果の詳細な同定は重要である。  

  そこで我々は有限要素法を用いた熱伝導解析を使用し、光熱効果における非線形光学

効果の詳細な解析を試みた。 まずホスト液晶5CBにゲスト分子DB14を混合させたゲスト・ホ
スト液晶に熱伝導率の異なった二つの基板を用いてサンプルを作成し、 実験からサンプル
内部に生じる屈折率変化量を測定した。次に熱伝導解析を用いてサンプル中の温度分布を
算出し、 そこから屈折率変化量を求め実験値との比較を行った。その結果、両者とも熱伝
導率の低い基板を用いた方が 高い屈折率変化量を得るという共通の見解を得るに至った。
このことで、我々が観測している現象は間違いなく熱による効果であるという 確証を得ること
ができた。さらに同様の熱伝導解析法を用いて光熱効果による自己位相変調効果の時間
応答特性の解析を行った。 ここでも実験から求めた時定数30msに対し、解析からは23msと
いう値が得られ、熱伝導解析法の優位性を示すに至った。 また時間応答特性解析の一環と
して、サンプル厚と入射ビーム径に対する時定数依存性を観測したところ、 サンプル厚の増
加やビーム径の拡大に従って時定数は増大するという傾向が得られた。 この現象も、熱伝
導解析法で求めたサンプル内の温度分布や熱の流れを考慮することで、非常に良く説明で
きた。

  以上の結果から熱伝導解析法は、光熱効果解析における非常に有効な手法であるいえ

る。  さらに光熱効果の画像処理への応用として、入力イメージを反転して出力させるイメー
ジインバージョン効果について観測を行った。 その結果、従来の1/2程度である0.68mWとい
う低パワーでの実現が可能であった。この現象においては解析を行っていないが、 熱伝導
解析法を用いることで上記と同様、詳細に解析できるものと考えられる。

(査読論文)

1. Transient characteristics of self-phase modulation in liquid crystals.
H. Ono and J. Kikuhara
Appl. Phys. Lett. 76 (2000) 3391-3393.
2. Effects of cell parameters on photothermal refractive index change in guest host liquid crystals.
H. Ono, Y. Harato and J. Kikuhara
Jpn. J. Appl. Phys. 39 (2000) 6376-6382.
3. Transient characteristics of photothermal self-phase modulation in guest host liquid crystals.
H. Ono and J. Kikuhara
Mol. Cryst. Liq. Cryst. 368 (2001) 377-386
4. Characteristics of time response of self-phase modulation in liquid crystals.
H. Ono and J. Kikuhara
Jpn. J. Appl. Phys. 40 (2001) 6526-6530.

(口頭発表)

1. 1999年9月 液晶学会討論会予稿集 80-81
ゲスト・ホスト液晶の光熱効果の熱伝導解析法による研究
菊原純一、原戸芳朗、小野浩司
2. 1999年9月 液晶学会討論会予稿集 272-273
ゲスト・ホスト液晶の高効率非線型光学効果を用いた全光型焦点可変レンズ
菊原純一、原戸芳朗、小野浩司
3. 2000年3月 第47回応用物理学関係連合講演会予稿集(第3分冊)1252
ゲスト・ホスト液晶の自己位相変調の時間応答
菊原純一、小野浩司
4. 2000年7月 The 18th International Liquid Crystal Conference (ILCC2000) at Sendai
Transient characteristics of photothermal self-phase modulation in guest host liquid crystals
H. Ono and J. Kikuhara
5. 2000年10月 液晶学会討論会予稿集
色素ドープ液晶の光熱効果を含む非線型光学特性の解析
菊原純一、小野浩司
6. 2000年10月 電子情報通信学会信学技報 OME
色素ドープ液晶の光熱効果による巨大非線形光学効果
小野浩司、菊原純一、佐伯創、吉田真、柴田和明
7. 2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会予稿集(第3分冊)
液晶の光熱効果の応答特性の詳細解析と画像処理応用
菊原純一、小野浩司
8. 2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会予稿集(第3分冊)
光熱効果を用いた液晶熱特性の解析
柴田和明、菊原純一、小野浩司
9. 2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会予稿集(第3分冊)
液晶ファブリペロデバイスによる光光スイッチの試作と解析
伊藤正樹、菊原純一、小野浩司
10. 2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会予稿集(第3分冊)
色素ドープ液晶の高効率非線形光学特性と全光制御型焦点可変レンズ
吉田真、菊原純一、小野浩司