RISU_TOP.GIF - 4,722BYTES  田邉春美

 修士論文:「マスク露光法によるフォトポリマーへの格子形成に及ぼすギャップ長の影響」

論 文 概 要

回折光学素子は屈折率分布や振幅分布が周期・非周期に形成された構造を持ち、回折現象によって入射光を制御する光学素子である。そして、フィルムのような薄型化が可能であるといった特長を併せ持っていることから、回折光学素子は光デバイスの中でも重要な位置を占めていると言える。
回折光学素子の作製にはフォトマスクを使用した表面パターニング技術が利用される。これはマスキングした基板に光を照射してパターンを転写する技術であり、フォトマスクを利用した方法は容易に周期的なパターンを形成できることからレリーフ構造や光配向膜の作製などにも広く用いられている
マスク露光の利点である大面積露光を行うためにはレーザー以外の光源を用いることも必要であるが、マスクと基板との間に距離を設けて行う近接露光の際にはその回折現象のために、基板へ照射される光のパターンが光源の光学的な性質にも左右されることになる。
 本研究では、近接露光においてマスク‐基板間のギャップ長と光源の性質とが格子形成に及ぼす影響について調査した。
まず、光重合および物質移動により表面レリーフ型回折格子が形成可能な光反応性低分子/高分子複合型フォトポリマーへ光源の種類と露光時のギャップ長を変化させて格子形成を行い、形成された格子の形状や回折特性を測定した。そして、その現象をコヒーレント性の観点から議論するためにコヒーレンス理論を用いてモデリングした格子からの回折光を数値計算によって求め、実際に形成された格子の特性との比較を行った。その結果、マスクを透過して材料へ照射される光の強度分布形状によって形成される格子の形状が決定していることが確認された。そして、格子の持つ回折特性は光波の空間的なコヒーレント性を考慮することで説明できた。回折特性と空間的コヒーレント性との関係性をさらに確かめるために、コヒーレント性に劣るランプ光源から発せられた光波の空間的なコヒーレント性のみを向上させて格子記録を行った結果、回折特性に変化が現れ、それは空間的にコヒーレントな領域の増減によって生じていることが数値計算から明らかになった。

(査読論文)

 

(口頭発表)

1. 2007年3月 第54回応用物理学関係連合講演会予稿集 第3分冊 1347
マスク露光法による液晶高分子複合体への回折格子形成
田邉晴美、小野浩司、川月喜弘
2. 2007年11月 電子情報通信学会有機エレクトロニクス研究会
フォトポリマーとマスク間距離が格子形成に及ぼす影響
田邉春美、小野浩司、川月喜弘
3. 2008年3月 第55回応用物理学関係連合講演会予稿集 第3分冊
マスク露光法によるフォトポリマーへの格子形成に及ぼすコヒーレント長の影響
田邉春美、小野浩司