論文概要 |
近年の情報処理・通信技術の拡がりによる高度情報化社会の発展に伴い、取り扱う情報量が増加している。そのため大量の情報を高速に処理し、記録を行う技術
が重要となっている。そして、それを実現するために世界中で小型・高機能デバイスの研究が行われており、早くから光デバイスの研究も行われてきた。特に、
ホログラフィーの手法を利用した機能性回折格子やホログラフィックメモリに関して盛んに研究が行われている。回折格子は様々な機能を有していることから、
光の照射により分子形状が変化するアゾベンゼン分子などの機能性材料と光波の偏光とを組み合わせることにより、多くの機能を持ち合わせた光デバイスを実現
できる可能性を有している。 よく知られているレーザービームは直線偏光、円偏光、無偏光で あり、偏光の空間分布は均一である。これに対して、偏光分布が半径方向や方位方向に分布し、ドーナツ状の強度分布を持つビームも存在する。このような光軸 に対して対称な偏光分布を持つビーム(軸対称偏光)は1960年代頃から研究が行われていたが、径偏光を強く集光した際に焦点付近に現れる光軸と平行な電 場が報告されると、研究が盛んに行なわれるようになった。現在軸対称偏光は、光ピンセット、光学顕微鏡、レーザー加工などへ応用研究が行われているが、ホ ログラム記録への研究は行われておらず、今後発展する可能性を有している。 そこで本研究の目的は、光空間変調素子を用いて偏光制御を行い、軸対称偏光を発生させ、発生させた軸対称偏光ビームによりベクトルホログラム記録を行い、その再生特性の検討とメカニズムの解明である。 軸対称偏光の発生方法は多く報告されているが、本研究では光空 間変調素子を用いて軸対称偏光ビームを発生させた。光空間変調素子を2回反射させることで偏光の制御を行い、波長板と組み合わせることで径偏光以外の軸対 称偏光を発生させることが出来た。次に、ベクトルホログラム記録への応用を検討するため、発生させた軸対称偏光をハーフミラーにより2つに分け、2光波干 渉系にて軸対称偏光同士のホログラム記録を行った。サンプルにはアゾベンゼン含有高分子膜を用いて、回折光の観測を行った。 その結果、ビームの光軸に対して対称的なホログラム記録を行う ことができた。また、軸対称偏光の組み合わせを変えることにより、光軸に対称で部分的に違う回折特性を得ることができた。観測された回折特性は、分子再配 列をモデルとしたJones法と、回折理論による解析によって説明することが出来た。 軸対称偏光をベクトルホログラムに用いることで、光軸に対称な回折特性が得られ、この軸対称偏光をベクトルホログラムへ応用することにより、新規的な回折格子の可能性が期待できる。 |
1.
Vector holograms using radially
polarized light, H. Ono, H. Wakabayashi, T. Sasaki, A. Emoto, T. Shioda
and N. Kawatsuki, Appl. Phys. Lett. 94 (2009)
071114.
1. | 2008年9月 電子情報通信学会信越支部大会 Z偏光成分を含む光波の干渉基礎理論の検討とベクトルホログラムへの応用の試み 若林宏幸、佐々木友之、江本顕雄、塩田達俊、川月喜弘、小野浩司 |
2. | 2009年3月 第56回応用物理学関係連合講演会 軸対称偏光を用いた多次元ベクトルホログラムの記録・再生特性 若林宏幸、佐々木友之、江本顕雄、塩田達俊、川月喜弘、小野浩司 |
3. | 2009年9月 第70回応用物理学会学術講演会 軸対象偏光を用いたホログラムの記録・再生特性 若林宏幸、佐々木友之、江本顕雄、塩田達俊、川月喜弘、小野浩司 |