神戸市東灘処理場の見学

 

 神戸市東灘処理場に修士1年バイオガス実証班篠田が見学に参りました。神戸市東灘処理場は下水処理場から発生するバイオガスの精製・利用に関して先進的技術を導入している処理場です。他にも、下水道のネットワーク化を進めている処理場でもあり、来年には垂水-西部-東灘処理場が地下でつながり、ひとつの処理場が災害で機能しなくなっても、他の処理場がそれをカバーできるシステムが完成します。阪神淡路大震災の時には、処理場の処理システムがダウンしてしまい、近くの小さな川を沈殿槽として利用したというお話も聞かせていただき、そう言った背景のもと下水のネットワーク化は効率化と災害時の対策が出来るとわかりました。処理場内の見学では卵型消化槽やこうべバイオガスステーション、バイオガス精製装置を見学させていただき、実際に卵型消化槽の上に登らせていただくこともできました。東灘処理場で行っているバイオガス精製装置は高圧水吸収法であり、バイオガスの主成分であるメタンと二酸化炭素の水への溶解度の差から2つの気体を分離するというものです。自身も研究でバイオガスの精製を行っておりますが、私が研究している膜分離法は気体分離膜を用いてメタンと二酸化炭素を分離します。実際に処理場から発生するバイオガスを分離する実証実験を行っておりますが、まだまだわからないことだらけです。このような一見違うように見える精製法でも、ガスを扱うにあたって通じる所は多く、しかもこの分野において著名な東灘処理場の精製技術を見る事が出来てとても勉強になりました。

テキスト ボックス:  
バイオガスを発生する卵型消化槽
テキスト ボックス:  
精製したバイオガスをCNG自動車に供給する場所
こうべバイオガスステーションは完全無人


 バイオガス利用として行われているCNG自動車へのガス供給のほかに、近々都市ガス導管への注入が行われます。今はまだ試験段階ではあるものの、装置を拝見させていただきました。現在行われているCNG自動車への適用と異なるのは、主にその組成にあります。バイオガスのエネルギー源であるメタンだけでは、都市ガスより熱量が低いことから、都市ガスの導管に注入する際には熱量調整が必要になります。加えて、他にも厳しい基準が設けられており、技術的に厳しいところもあったと教えていただきました。

CNG自動車にガスを供給しても、まだ発生バイオガスの全量利用には至っておらず、都市ガス導管への注入で更なるバイオガス利用が推進されると考えられます。この神戸東灘処理場を1つのモデルとし、全国でもこのような事例が増えていけば良いと思います。

 

私自身が行っている研究テーマでもバイオガスを扱っていますが、このような実際の処理場で精製・利用を行っている現場を見学出来て、とても良い勉強が出来たと思います。圧縮機や、除湿、貯蔵など通じる細かい部分の詳しい説明、ご丁寧に建設の経緯から説明していただき、東灘処理場の皆さま本当にありがとうございました。

文責 修士1年 篠田 啓