下水汚泥バイオガスからの燃料化システムの開発
(修士2年:澤本
英治 修士1年:篠田 啓)
【研究背景】
近年,地球温暖化等の環境問題を背景として環境負荷の低減や循環型社会の形成が望まれており,未利用エネルギーの有効利用が求められております.下水汚泥処理工程において発生する下水汚泥バイオガスには,メタン(CH4)が約60%含まれており燃料として有効なエネルギーとして注目されています.しかし,同時に二酸化炭素(CO2)が約40%含まれており,都市ガス等に比べ熱量が低く利用用途が限られ,全国で発生する下水汚泥バイオガスの約30%が有効利用されずに焼却処分されているのが現状です.
【研究目的】
本研究では未利用エネルギーの有効利用促進に寄与するため,膜分離法(DDR型ゼオライト膜)によって下水汚泥バイオガス中のCH4とCO2を分離・回収し,回収したCH4をガスエンジン発電機や天然ガス自動車の燃料として適用する事を目指しております.
【本研究の特徴】
1.DDR型ゼオライト膜を用いたガス精製
本研究では,DDR型ゼオライト膜(以下,DDR膜という)という気体分離膜を用いてCH4とCO2の分離を行っています.このDDR膜は,ゼオライト結晶の細孔を利用して,細孔径より小さな分子(CH4分子)のみ吸着・透過する「分子ふるい効果」を用いることによって気体の分離を行っております.そのため、ガスをコンプレッサーで昇圧して膜に供給するだけでガス分離が可能であり、省エネルギー・省スペースでガス精製が可能な方法です.
(新潟県信濃川下流流域下水道長岡浄化センターで実証試験中)
1.DDR膜による精製の原理
2.活性炭吸着貯蔵タンクへの精製ガス貯蔵
本研究では,精製した高純度CH4ガスを活性炭吸着貯蔵タンク(以下,吸着貯蔵タンクという)へ貯蔵しております.この吸着貯蔵タンク内には活性炭が充填してあり,活性炭にガスを吸着させることにより同じ量のガスを約1/10のスペースで貯蔵することが可能となっております(同圧での圧縮貯蔵方式比).
2.活性炭吸着貯蔵タンク
3.低コスト小型ガスエンジンによる高効率発電
下水汚泥バイオガスに対応するガスエンジン発電機はまだまだ開発途上であり,市販品はかなり高価で大規模です.そこで本研究では,ガス精製により発電効率を向上させるとともに,土木研究所と共同で一般に建設現場等で使用されているディーゼルエンジン発電機を下水汚泥バイオガスに適用できる改造を施し,中小規模処理場にも導入可能な低コスト発電システムの開発を目指しております.
(新潟県魚野川流域下水道堀之内浄化センターで実証試験中)
3.ガスエンジン発電機
【これまでの成果】
Ø
実消化ガスからのCO2/CH4分離の成功および膜分離貯蔵システムの開発
Ø
ガスエンジンを用いた発電の実施
Ø
長岡浄化センター内での消化ガス精製,発電システムの実証実験
【掲載された新聞・雑誌等】
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月刊下水道 2008年10月号
Ø
水道産業新聞 2008年8月21日
Ø
環境新聞 2009年8月19日
Ø
水道産業新聞 2009年9月7日
Ø
水道産業新聞 2009年9月10日
Ø
月刊下水道 10月号