循環型社会を目指したリンリサイクル技術の開発
(学部4年:菊池 章雄)
1. 本研究の背景
リン鉱石は枯渇資源であり、2060年には枯渇してしまうといわれています。
リンの資源国であるアメリカや中国では輸出規制を強化しており、リン鉱石の価格が高騰しています。日本はリン鉱石を海外からの全量輸入に頼っているため早急な解決策の提示が求められています。
一方、日本の下水汚泥には多量のリン(以下:P)が含まれております。こうした下水汚泥からのリン回収技術による肥料化の開発に期待が高まっています。
2. 本研究の目的
日本では輸入したリン鉱石の約8割が肥料用途に使われています。
ここで、P2O5が25%以上含まれる下水汚泥焼却灰を肥料として再利用できれば、資源小国である日本のリン資源の安定確保につながります。更に、リンは以下のようなフローを経て循環利用が構築されることになります。
本研究においても、下水汚泥焼却灰からリン肥料を作成し、その実証試験を通して、リン循環利用技術の確立を目的としています。
3. 本研究の取り組み
(1)リン肥料作成実験
本研究がこれまでに取り組んできた下水汚泥焼却灰のリン肥料化技術を以下に示します。
下水汚泥からリン酸カルシウムを作成します。リン酸カルシウムは、下水汚泥焼却灰からリン酸を抽出、消石灰で析出させることで得られます。つまり、リン鉱石の代替物の肥料原料として利用が可能と考えられます。
(2)畑での実証実験
本研究では作成した肥料に関しては、実際に畑に施肥して農作物や花きの栽培試験を行いました。そして、肥料の実土壌への影響や農作物への影響を明らかにしました。
(写真:畑での栽培の様子)
(写真:丘陵公園にて栽培した花きの調査)
4. 今後の展望
より高品質な過リン酸石灰肥料を作成し、どのような灰からでも安定した高品質なリン肥料を作成することを目指し、その技術の普及により、リン資源枯渇問題の解決策とさせることを目的とします