CO2およびCH4分離回収・排出削減のためのゼオライト膜の開発
(修士1年:高橋 龍二 学部4年:木谷 尚史)
■研究背景
近年、地下資源の枯渇、地球温暖化を背景に未利用エネルギーの有効利用や温室効果ガスの抑制が求められています。このような背景を受け、下水道分野では、嫌気性消化により発生する消化ガスにメタン(CH4)が約60%含まれていることから、有益なエネルギー資源として注目されています。しかし、消化ガスは二酸化炭素(CO2)を約40%含んでいるため熱量が低く、組成も不安定なことから発生したガスの約30%が焼却処分されているため、消化ガスから高純度のCH4、CO2を分離回収することで、利便性が高く、価値の高いガスへの変換が可能である。CH4の有効利用先としては、ガスエンジン、マイクロガスタービンによる消化ガス発電、自動車燃料、都市ガスなどがあります。
■研究目的
本研究では、下水道施設から排出される消化ガスCO2およびCH4の分離回収を標的としており、CO2分離性能が高いゼオライト膜の開発、長岡浄化センターのバイオガスを用いた実証実験により新技術の創生を目的としています。
■ゼオライト膜とは?
ゼオライトとは結晶性含水アルミノケイ酸塩の総称であり、ゼオライトの種類は合成品および天然品を含めて200種類を超える数が存在しています。構造はSi(またはAl)を中心とするSiO4(AlO4)四面体が三次元的に規則正しく配列したものであり、その配列の仕方によって3〜10Åの均一な細孔が形成されています。ゼオライト膜はゼオライト結晶の細孔を利用して、細孔径より小さな分子のみ吸着・透過する「分子ふるい効果」を用いることによって気体の分離を行います。
■DDR膜とは?
ゼオライトの中でもFramework Type Code(FTC)が「DDR」であるゼオライトのことであり、研究で着目しているDD3R(Deca-Dodecacil 3R)以外にも、Sigma-1やZSM-58と呼ばれるゼオライトも属します。酸素8員環から成る3.6×4.4Åの細孔を有することから、分子径が3.3ÅのCO2と3.8ÅのCH4を分離することが可能です。私たちの着目しているDD3RはDDR型ゼオライトの中でもアルミニウム分を含まず、基本骨格がすべてシリカ(SiO2)から成っています。オールシリカゼオライトと呼ばれる種類にも属し、非極性の分子をよく吸着するため、低級炭化水素分子の吸着、分離に適すると考えられています。
■これまでの成果
・実消化ガスからのCO2/CH4分離の成功および膜分離貯蔵システムの開発
に成功しています。
■今後の展望
現在は実消化ガスから分離したCH4を、ガスエンジンを用いて発電することで気体分離膜による消化ガス発電プロセスの開発を行っています。