Daphnia magna繁殖試験による河川水の水質リスク評価

(学部4年:霜田 健太)

 

[背景]

近年、環境水における化学物質の存在形態が多種多様になってきており、毒性評価・安全性評価がますます重要になってきている。例えば、外因性内分泌撹乱化学物質やダイオキシン類といった非常に低量ながらも強い毒性を示す物質の存在、さらには基準値以下の毒性物質や未規制化学物質が複数存在することにより毒性が発現する複合作用などが挙げられる。こういった問題に対して、環境安全性の有効な評価方法として位置づけられているのが、生物材料に評価対象となる試料を直接暴露し、得られた生物応答を分析値とするバイオアッセイ法である。

バイオアッセイ法は、指向対象により、人の健康影響を評価するものと生態系への影響をみるものに大きく分けられる。このうち、生態系保全のための安全性評価は、わが国でもようやく水生生態系において考慮されるようになり、環境基準の改訂や化審法における化学物質分類に反映されている。本研究では数ある水生生物を用いるバイオアッセイ法の中で、D.magna(オオミジンコ(図-1))を供試生物に用いて環境水評価に適用する。D.magnaを用いる理由は、以下に示す特徴を持つためである。

    生態系の重要な位置(一次消費者)に存在する種である。

    毒性物質に対する感受性が高く、再現性にも優れている。

    OECDにおいて重要試験に位置づけられており、国内でも化審法などの種々の公定法に規定されている。

    重要視されている生態毒性試験(生態系の代表的栄養段階に位置する藻類、ミジンコ類、魚類を用いた試験)の中で、急性毒性の評価だけでなく、唯一、長期的な影響を評価する繁殖試験が公定法に定められている。

 

 

[目的]

本研究の目的は、多地点における環境水(河川水)サンプルを対象として、 D.magna繁殖試験(図-2)を行い、BODCODTOCの測定や単一の化学物質の測定などでは測りきれない水質リスクを総括的に評価することである。

 

[繁殖試験の方法]

 孔径1μmのガラス繊維ろ紙でろ過した河川水を試験水として用い,OECDテストガイドラインNo.2111998)に準拠して行う。生後24時間以内 の幼体を1容器に1頭ずつ入れ(5連),給餌は週6回クロレラを投与する。換水は週3回行う。対照区としては曝気水道水を用いる。試験結果は,21日間に おける親個体の生存数および累積の産仔数を中心に評価する。

 

[今後の計画]

 今回、評価対象とする河川は信濃川(図-3)を中心とする計画である。信濃川は、流域面積が国内第3位、河川長及び年平均流量が国内第1位と、日本を代表する大河川である。水道水源としても広く利用され、さらに水生生物保全の取組みも盛んであることから、信濃川を対象とすることは今後の評価範囲の拡大を図る上でも有用な情報を与えると考えられる。

-3 信濃川河川風景