CO2およびCH4分離回収・排出削減のためのゼオライト膜の開発
(修士2年:早川 栄二)
■研究背景
近年、地下資源の枯渇、地球温暖化を背景に未利用エネルギーの有効利用や温室効果ガスの抑制が求められています。また、メタン(CH4)改質による水素製造、二酸化炭素(CO2)の植物生産への利用など、新たな資源の利用価値が出てきています
このような背景を受け、CH4とCO2を主成分とするバイオガス(下水処理場などの嫌気性消化から発生するガス)や天然ガスが注目されています。これらの資源を有効活用するために、CH4とCO2の分離技術が重要となります。
現在、CO2とCH4の分離技術としてCO2を溶液に吸収させる吸収法、吸着材にCO2を吸着させる吸着法が広く利用されています。しかし、これらの手法は比較的規模が大きく、吸収液・吸着材からCO2を放出させるために多くのエネルギーを必要とします。そのため、省エネルギーかつ省スケールな分離技術として膜分離法が注目されています。膜分離法は、膜に圧力をかけるのみで分離が可能であるため省エネルギーであります。また、設備規模が小さく済むため既存の下水処理場への適用も可能となります。加えて、膜分離法はガスを流した直後から分離が可能なため、植物の光合成に合わせた運転が可能です。
本研究では膜の材料としてDDR型ゼオライトを用いた気体分離膜を開発し、性能向上を行っています。
■研究目的
本研究は下水処理場の消化ガス、天然ガスの適用を目的に、より高性能な膜の開発を中心に行っている。また、新規ゼオライト膜を開発しより広い分野への適用を目的としている。
■ゼオライト膜とは?
ゼオライトとは結晶性含水アルミノケイ酸塩の総称であり、ゼオライトの種類は合成品および天然品を含めて200種類を超える数が存在しています。ゼオライトは吸着材、触媒など多くの機能を持ち、幅広い分野で利用されています。
構造はSi(またはAl)を中心とするSiO4(AlO4)四面体が三次元的に規則正しく配列したものであり、その配列の仕方によって3〜10Åの均一な細孔が形成されています。ゼオライト膜はゼオライト結晶の細孔を利用して、細孔径より小さな分子のみ吸着・透過する「分子ふるい効果」を用いることによって気体の分離を行います。
■DDR膜とは?
ゼオライトの中でもFramework Type Code(FTC)が「DDR」であるゼオライトのことであり、酸素8員環から成る0.36×0.44nmの細孔を有する。CO2が0.33nm、CH4が0.38nmの大きさを有するため、DDR膜によりCO2とCH4が分離可能です。.
DDRはアルミニウム分を含まず、基本骨格がすべてシリカ(SiO2)から構成されています。そのため、耐久性、耐薬品性に優れているという特徴を有します。このため、過酷環境下での運転も可能です。
■これまでの成果
・実消化ガスからのCO2/CH4分離の成功および膜分離貯蔵システムの開発に成功しています。
■今後の展望
DDR型ゼオライト膜の高性能化のために、薄膜化・緻密化や大型化について検討していきます。また、新規ゼオライト膜の開発についても検討していきます。