下水汚泥からのリン回収技術の開発

 

【研究背景と目的】

リンは肥料として農業生産に必須な元素であり、近年バイオ燃料の生産量や世界人口の増加により需要が増加している。しかしリンは枯渇性資源であるため産出量の先細りが懸念されており、日本国内に資源が存在しないことからほぼ全量を輸入に依存しているのが現状である。このことから現在国内でのリンの再利用が求められており、リンの供給源として下水汚泥焼却灰が注目されている(図1)。下水汚泥焼却灰は日本全体で年間23t発生しており、P2O5換算で年間5tとなる。これは輸入されるリンの約10%に相当し、下水汚泥焼却灰が国内のリン供給源になりうることを示している(図1)。

 

 

【研究の取り組み】

本研究室ではこれまで、下水汚泥焼却灰からのリン回収としてリンを肥料であるリン酸カルシウムとして回収する灰アルカリ抽出法によるリンの回収を行っています。回収したリンは、肥効成分の含有率や重金属量を測定し品質を評価しています。また、作製したリン肥料を使用して実際に農作物を栽培することで、リン肥料の肥効性と安全性の確認を行っています。表1に回収したリン肥料(リン酸カルシウム)の重金属含有率を示します。測定の結果、いずれも肥料取締規格基準値以下となっており、重金属含有率の面から、肥料の安全性が確認されています。図2に回収したリン肥料を茶豆栽培に利用した際の実験結果を示します。図より実験で回収したリン肥料である過リン酸石灰とリン酸カルシウムが、市販のリン肥料と同程度になっていることが分かります。

 

 

 

 これまでの研究から、灰アルカリ抽出法で回収したリン肥料の安全性と肥効性は既に確認されています。このため現在は、植物へのリン吸収を阻害し肥効性を低下させるアルミニウムの除去を行うことで、回収したリン肥料のさらなる高品質化を目指し実験を行っております。

 

参考文献

酒巻尭史:リン循環に向けた下水汚泥焼却灰を原料とするリン肥料の実用性の検証

25回土木学会関東支部新潟会研究調査発表会,360-361,2007