下水道からの資源回収及び熱回収

(修士2年:本間 康弘 、修士1年:佐々木 星弥)

 

【研究背景】

 下水処理場は下水の集約する施設である。下水処理場では定常的に水資源を生産し、下水汚泥の処理で発生するバイオガスと集約する下水の下水熱ポテンシャルは再生可能エネルギーとして利用できる可能性がある。しかしながら、現在有効利用されている処理水の割合は約1.3%とほぼ全量未利用、バイオガスは約7割が有効利用され、約3割が未利用となっている。またバイオガス中のCO2(二酸化炭素)はほぼ全量未利用である。下水熱ポテンシャルに関しても利用割合は1%未満とほぼ全量未利用となっている。

 

図1、図2、図3 下水処理場の資源利用状況

 

 また、日本には約230種類の水草が生育している。そのうち40%にあたる88種類が絶滅危惧種および準絶滅危惧種に指定されている。種の保存のために生育環境保全が必要だが、適した栽培環境が未解明である場合はそれも不可能なため、植物園が行う希少種の生息域外保全は重要な存在となる。新潟県に広く生息する栽培困難水草である梅花藻の仲間は栽培成功例がなく、日本の植物園での保有数がゼロとなっており、栽培環境の構築が必要である。

 梅花藻の栽培環境としては低温の強い水流のある環境に高濃度CO2、適切な栄養塩を添加することで梅花藻の栽培可能性が示されたが、長期間の検討には大量の低温清流、CO2が必要となる。

 

写真1 栽培困難水草である梅花藻

 

【研究目的】

 本研究では低温の清流を安定して供給するため、ほぼ全量未利用となっている再生可能エネルギー(下水熱ポテンシャル)の植物栽培への適用を目的とする。

 植物栽培におけるCO2供給に関して、CH4(メタン)約60%、CO2約40%のバイオガスについて低エネルギーで高濃度にCO2を回収できる膜分離システムの構築を目的とする。

 絶滅危惧種である栽培困難な植物、梅花藻の栽培方法の確立を目的とする。

 

【研究成果】

DDR型ゼオライト膜(分離係数高)を使用し、透過側を減圧することでCH4濃度95% (自動車燃料利用)、CO2濃度97%(メタンの燃焼下限値以下)までそれぞれ精製することに成功した。

DDR型ゼオライト膜を利用した精製で、500時間の長期連続運転に対し安定した精製が確認された。

・精製したガスの活性炭吸着による小スペース貯蔵システムの開発を行なった。

・有機膜(分離係数低)を使用して、CO2を精製するシステムの構築を行なった。このシステムではCO2濃度98%まで精製することができた。

 

【今後の展望】

・有機膜を利用したCO2精製システムの長期連続運転による高濃度CO2の安定供給

・下水熱ポテンシャルの植物生産への適用

・下水道資源を利活用した植物生産システムの構築

・再生水利用、CO2供給による藻類微細培養

・藻類からのエタノール生産、エタノール精製

 

写真2 藻類培養の屋外実験