未利用バイオマスを用いた混合メタン発酵技術の開発
(修士2年:笹渕 晃洋 修士1年:藤原 史奈)
1. 研究の背景および目的
昨今,化石燃料の枯渇や地球温暖化対策、循環型社会の構築に向け、「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されるなど、バイオマス利活用促進の取り組みが活発となっています。バイオマスとは、農林水産物、食品廃棄物、家畜排泄物、木くず、下水汚泥等の有機性廃棄物で持続的に再生可能な資源です。また、バイオマスを燃焼させることにより発生する二酸化炭素は、もともと大気中から固定されたものであるのであり、燃焼させても大気中の二酸化炭素を増加させないという「カーボンニュートラル」という特性を持ち、大変注目を集めています。
バイオマスの利用法の1つとして、下水処理プロセスの嫌気性消化(メタン発酵)が挙げられます。嫌気性消化は有機性廃棄物を減容化させるだけでなく、エネルギーの回収をすることができます。また、消化残渣も建設資材、コンポスト、炭化燃料として有効利用できることも注目されています。
図1 一般廃棄物の処理割合(環境省HPより)
また、廃棄物の多くは、焼却されているのが現状です。焼却を減らす技術の一つとして本研究室では、混合嫌気性消化についての研究を行っています。混合嫌気性消化は廃棄物と廃棄物を混合し、同じ消化槽で処理するという技術です。混合嫌気性消化は通常の嫌気性消化よりも、消化ガスを増産することができます。
図2 混合嫌気性消化技術のイメージ
2. 研究の取り組み
本研究室は、これまでに混合嫌気性消化の対象として有機物を多く含有している稲わらや廃グリセリンに着目し、混合嫌気性消化の有用性を明らかにしてきました。本研究室では、エネルギー資源として新たに刈草や生ごみに注目しています。刈草は破砕以外の前処理が特に不要ということが明らかとなってきています。生ごみは、高い含水率と分解性を有していることが明らかになりました。
本研究では、メタン発生量、固形物(TS)分解率、上澄み液の特徴、消化汚泥の粘度および脱水性について測定し、未利用バイオマスを混合することによる効果を、システム全体で検討しています。
消化汚泥の成分や熱量を分析することで、消化汚泥の利用用途についての検討も行っています。
混合嫌気性消化を行うことで、消化ガスを増産できることが明らかになりました。しかし、未利用バイオマスを混合嫌気性消化するためには、破砕をする必要があります。破砕等の使用電力と、既設のシステムを事業性の面から比較することで、実用化の可能性についての検討を行っています。