レオロジー組・伸張流れ班
ネマチック液晶内の分子は静置状態でも特定の方向への配向を保っており,分子の配向方向とせん断流動を与える方向の関係によって粘度が異なる値を示す,すなわち,流動異方性の性質を有することが知られている.一方,棒状や平板状の粒子が分散している懸濁液は粘性係数に方向依存性を持たない等方性流体として扱われる.
通常,懸濁液に分散している各粒子の方向は無秩序であり,何らかの原因で配向したとしてもすぐに秩序性が失われることが多いからである.
これらの異方性形状粒子が分散した懸濁液でも流動によって粒子が一方向に配向しそれが保持されている状態であれば,ネマチック液晶と同様に流動異方性が発現すると予想されるが,流動異方性を実験により証明するには2方向に任意に制御されたせん断流動を印加して発生した応力を各方向に対して独立に計測できるシステムが必要であり,そのような研究報告はこれまでになされていない.
本研究では異方性形状粒子が分散した懸濁液の流動異方性を実験的に検証することを目的とした.流動異方性の測定のため市販の回転型レオメータに取り付けて使用する独自の流路を開発した.この流路は主流である二次元ポアズイユ流れで粒子配向を誘起しつつ,主流と直交方向に二次元クエット流れを発生させることができる.そして,それぞれの流動抵抗の測定から互いに直交する二方向のせん断粘度の同時評価を可能としている.試料にはシリコンオイルを分散媒とした懸濁液を用いた.分散質の形状が流動異方性に及ぼす影響を明らかとするため,球状PMMA粒子懸濁液,テトラポット形状の粒子懸濁液,棒状粒子である炭素繊維懸濁液を用意した.また,炭素繊維懸濁液に関しては繊維長や分散濃度が異なるものを数種類準備した.これらの試料に対して独自の流路を用い,分散粒子が流動配向した状態における配向方向のせん断粘度とそれに直交する方向のせん断粘度を同時に測定し,比較する.
Fig. 1 ARES G2