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修士論文・卒業論文の概要/2020年3月修了・卒業

2020.3 修士論文

冨所滉大朗
2004年新潟県中越地震における被害地域の地盤特性評価

本研究は、2004年新潟県中越地震で被災した小千谷市を対象に被害情報と地形情報のアップデートを行ない、既往研究の分析方法を参考に建物被害と地形分類の関連について検討を行った。地震による建物被害と地形分類の関連について、これまで様々な研究や報告がされており、被害情報と地形情報を重ね合わせ相関分析を実施している。本研究では、被害情報と地形情報の精度の向上を目的に、地震前後の空中写真と住宅地図による1棟ずつ被害判定する方法を提案、実際に被害判定を行ない被害情報のアップデートを実施した。また、現地での物理探査を行ない地盤特性の評価し地形情報のアップデートも実施した。そして、アップデートした被害情報と地形情報を重ね合わせ、建物被害と地形の関連について検討した。
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根本 峻
地震被害と地盤特性を考慮した複合的地震ハザード評価

2016年に発生した熊本地震では,火砕流堆積地盤が原因と考えられる地盤被害が多数報告された.地下水を汲み上げ熊本市域に上水を供給している秋田水源地,沼山津水源地では,杭基礎構造のポンプ建屋が傾く被害が発生した.既往研究では,この被害は支持層以深で何らかの要因で生じた火砕流堆積地盤の圧縮・沈下が原因と指摘している.本研究ではこの火砕流堆積地盤の圧縮・沈下の原因を明らかにすることを最終目的とし,被害地域の地盤の地震時挙動を地震応答解析より明らかにした.被害地域では地震応答解析のパラメータに直結する地盤調査結果が得られていないため,既往の地盤調査結果,近傍の地盤調査結果,同じ火砕流堆積地盤で得られた試験結果等を収集し,適切な地盤モデルを構築した.
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松本拓未
地震被害と地盤特性を考慮した複合的地震ハザード評価

本研究が対象としているミャンマー連邦共和国は,東南アジアのインドシナ半島西部に位置する国土約378,500km2,人口約5,000万人の国である.旧首都にあたるヤンゴンは人口約736万人を抱える国内最大の経済都市であり,高層ビルの建設や鉄道の整備など都市開発が著しく進んでいる.また,ミャンマーは地震やサイクロン,洪水などの自然災害が多く,その中でも近年は大規模地震の発生確率が高まっているとされる.ミャンマーはプレート境界部に位置し,国土の中央には活断層も縦断していることで,非常に高い地震リスクを抱えているが,建設基準が存在せず耐震設計が義務づけられていないなど地震対策が不十分であるのが現状である.地震対策の強化に向けて,同じ地震大国である日本の支援は必要不可欠であるといえる.
地震被害には,地震の大きさや地盤の特性,構造物の強度など様々な要因が関係するが,本研究は地盤の特性に着目することで,最大都市であるヤンゴンの地盤の脆弱性を評価した.地震リスクの軽減・災害対策意識の軽減を目的に,ヤンゴン市内の568区域において最大速度の地盤増幅率を推定し,推定値によって色分けした地盤増幅率マップを作成することで区域ごとの脆弱性の違いを表現した.また,本研究では次の3つの方法によって地盤増幅率を推定した.@東京都地域危険度測定調査の地盤分類を利用した推定,A常時微動観測を利用した推定,Bボーリングデータを利用した推定.目的や役割が異なる@〜Bの推定を順に進めていき,最終的に最も推定精度が高い1つの地盤増幅率マップを作成した.さらに,微地形を利用して推定精度を確認し,増幅率が大きいエリアの地形的な特徴も捉えた.
最終的な地盤増幅率マップは推定方法AとBの結果を用いて作成した.常時微動観測とボーリング調査の結果を利用することで,ヤンゴン市内の地盤特性を反映した地盤増幅率を推定することが出来た.140地点の常時微動観測結果から求められた卓越振動数は1.0〜3.0Hzの範囲であり,日本の基準から考えてもヤンゴン市内の地盤は比較的柔らかいということが分かった.作成した地盤増幅率図によるとヤンゴン市内はエリアによって脆弱性が大きく異なり,それは地質年代や標高といった条件に依存する可能性が考えられた.本研究で作成した地盤増幅率図はヤンゴン市内の脆弱性を明瞭に表しており,構造物の耐震性評価や今後の都市開発に有効に活用できるのではないかと思っている.
2020.3 卒業論文

長内泰志
新潟県を対象とした地震動の距離減衰式の評価

日本全国で行われている地震リスク評価では,想定地震動を距離減衰式から算出している場合が多い.距離減衰式は観測事実に基づき構築されているため,ある程度の精度を有する.一方,評価対象地域特有の地形や地下の構造などが考慮されていない.そのため,詳細的に見た場合,地震動予測の精度が落ちる可能性が考えられる.また,距離減衰式は過去の地震データを統計的に処理した経験的手法に基づいた式であるが,2000年以降の大規模な地震のデータが反映されていないものが多い.そこで,本研究では精度を高めるため地域を新潟県に限定し,精度の高い距離減衰式を構築する.
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笠原海斗
1987年千葉県東方沖地震における東京都23区の地震動再現の試み

現在の日本では,首都圏直下地震の発生が懸念されており,1万人規模の人的被害が想定されている.そのため,過去の地震における地震動や被害の状況を把握することは今後の地震防災において重要である.また近年,情報通信環境の向上,高機能な携帯端末の普及により地震に関する様々なデータが蓄積されているが,地震観測記録としては限定されている.そして,1987年千葉県東方沖地震は房総半島沖を震源とする地震で関東地方の比較的広範囲で大きな被害を引き起こした.そこで本研究では,千葉県東方沖地震を対象に強震動評価技術を用いて,東京都23区の地震動の再現を試みる.
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