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研究テーマ


地震工学研究室では地震被害の軽減を目的に様々な調査・研究を行っています。

【1】強震動予測の高精度化
将来発生する地震を想定し、その際に生じる地震動の高精度予測に取り組んでいます。
■地震と地震動
『地震』とは岩盤内の破壊(震源破壊)に伴い弾性波(地震波)が発生し、それが地殻・地盤を通じて地表へと伝播して地面や構造物を揺らす自然現象であり、その時の地盤の揺れを『地震動』と呼びます。
■地震動に及ぼす影響
地震動は地震を引き起こす震源の特性(震源特性)、地震波を伝播する地盤の特性(伝播経路特性)、対象地点近傍の地盤の特性(サイト特性)に影響を受けます。
■地震被害と地震動
地震では地盤や構造物に様々な被害を引き起こします。被害原因は複数ありますが、被害の多くは地震動が原因と考えられています。
地盤や構造物が持つ地震対する抵抗力(耐震性能)に対して、それよりも大きい地震動(地震力)が作用すると地盤や構造物には被害が発生します。
■地震動予測と被害軽減
地震が発生する前に各地の地震動がわかれば、耐震性能を向上させることにより、地震被害を防ぐことができます。
そのため、地震動予測の高精度化は地震被害の軽減に直接に結び付きます。


2007年能登半島地震(Mw6.6)での強震動シミュレーション結果(ISK001:珠洲市、ISK003:輪島市)
赤色:観測記録、青色:解析結果


【2】震源のモデル化
強震動予測の高精度化のためには複雑な震源の破壊を表現できる震源モデルが必要です。
本研究では、強震動生成域(Strong Motion Generation Area, SMGA)を用いた震源のモデル化に取り組んでいます。
SMGAとは震源破壊において強い地震動を生成する場所で、これを複数断層面上に配置することにより、複雑な震源破壊を表現します。
国内外で発生したM6〜M7クラスの既往地震の震源をSMGAモデルで再現し、SMGAモデルの特性化を行います。

3つのSMGAから構成された2007年能登半島地震の震源モデル

【3】地盤・地形調査
地震動はその地点の地盤や地形の条件に大きく影響を受けるため、微動や表面波を用いた物理探査手法を用いて地盤特性を調査します。
海外で発生した地震については地図や地形データが得られていないことが多いため、UAVを用いて上空から地形を確認するとともに、航空写真測量技術を用いて地盤の数値標高モデル(Digital Elevation Model, DEM)を作成し微妙な地形条件が地震被害に及ぼす影響等を検討します。
また、地震で被害を受けた地盤は時間に伴い変化する場合がありますので、時間断面ごとにDEMを作成して相互比較を行ったり、精密GPS測量による定点観測などを行い、地盤の変化を定量化します。

【4】地震被害調査
地震や地震被害についてはまだ明らかにされていないことがたくさんあります。
現地を訪問し、どのような場所にどのような被害が発生したのか、地震動の分布と地震被害の分布との関係、またそれらと地盤条件との関係を調査し、地震動生成や地震被害発生のメカニズム等の解明のための貴重なデータを蓄積します。
特に地盤に起因する被害は、地震後も被害が拡大したり、たの自然災害を引き起こすことがあります。そのため、地震後も継続して調査を行います。 同時に、地震動などの地震に伴う各種データや地盤調査結果、地震前後の気象条件等のデータを集約しアーカイブします。


【5】地震被害地域の地盤の安定性評価
斜面災害など地震で傷ついた地盤はその後の降雨や降雪により被害が徐々に進行する場合があります。
この状態で新たに地震が発生すると、前の地震被害を上回る被害が生じる場合があり、潜在的な地震リスクとなる可能性があります。
現地踏査とともに、高精度GPS測量、衛星写真、UAVなどによる航空写真を用いて、地盤被害があった地域の安定性を評価するとともに、安定性評価の最適手法を検討します。

【6】地盤の脆弱性評価
地盤が軟弱な場合、地震時の地盤の揺れが増幅され、構造物に大きな被害を与えます。
微動や表面波探査等の物理探査的手法と微地形・表層土質分類から地盤の脆弱性を評価する方法を検討し、地震被害予測や防災計画の高度化につなげます。
研究成果は、我が国のみならず地震が多い東南アジア諸国の都市防災・災害軽減に展開可能です。

【6】地盤の地震時挙動評価
地震時に地盤はその動的特性に応じて複雑に挙動します。この地盤の地震時挙動が地中構造物や基礎構造物に大きく影響を与えます。
地震被害と地盤挙動の関係を解明するため、地盤の地震観測記録等により大地震時の地盤挙動を明らかにします。
また、地盤調査結果や現地調査等に基づき地盤の動的特性を評価し、数値解析的手法により地震時の地盤挙動の高精度予測にも取り組みます。

【7】地盤と構造物の連成系解析
地盤上に建設された構造物の地震時挙動は複雑で、地盤の挙動から影響を受けるとともに、構造物の挙動が地盤の挙動に影響を与えます。
構造物の地震時挙動を適切に評価するため、地盤と構造物を連成させた評価手法の高度化を行います。

【8】地震リスク・ハザード評価
我が国ではこれまでに規模の大きい地震が複数発生し様々な被害が発生してきました。今後も規模の大きい地震の発生が危惧されています。
プレート境界や活断層等の地震発生減や周辺の地盤条件等を考慮して、地震危険度として評価し、ハザードマップとして可視化することにより、地震防災・災害軽減に役立てます。

【9】地震および地震被害に関連する情報のデータアーカイブ
地震被害は繰り返し発生すること、類似の地盤・地質条件を持つ地域では同様の地震被害が発生することが既往地震から知られています。
そのため、地震および地震被害に関連する様々な情報を今後の災害軽減・地震防災に利用できるようにデータアーカイブを構築します。