研究の概要

  1. Superpaveジャイレトリーコンパクタを用いた体積設計法に関する研究

  2. 【背 景】
       米国のSHRP事業の成果として開発されたアスファルト混合物の配合設計法,Superpaveはアジアの諸外国でも導入が進められており,中国や韓国では実務レベルで運用されつつある。わが国では,Superpaveで必要なバインダー関係や混合物関連の機器が比較的多く導入されているにもかかわらず,それらの具体的な運用方法やSuperpave設計法の手続きに関する技術的評価,検討,および開発がほとんど行われていない。

       特に,Superpave設計法の過程で評価用の供試体を作製するSuperpaveジャイレトリーコンパクタ(SGC)は,かなり多くの研究機関で既に導入されているが,最近では研究開発においてもほとんど活用されていない。

       米国Superpaveの最大の功績は,SGCとPGグレードの開発,標準化であるといっても過言ではない。SGCは混合物にニーディング作用を与えながら締め固めることが可能で,マーシャルランマーによる突き固めと比べると,はるかに実舗装での締固め状況に近い条件で供試体を作製することができる。

    【目 的】
       本研究の目的は,わが国の現行配合設計法であるマーシャル設計法に基づいて,SGCを用いた体積設計法を開発することである。ここでいう「マーシャル設計法に基づいて」とは, マーシャル設計法の使用機器や基準を流用するのではなく,通常のマーシャル法で設計した場合と同等の設計アスファルト量と基準密度が得られるように設計要領を策定することである。

       わが国の現行配合設計法では,アスコン供試体を作製,評価することなく,机上の計算で 骨材粒度が決定されるため,設計アスファルトを選定することが実質的な配合設計の目的 となっている。また,SGCを配合設計の手続きに導入するためには,その運用仕様,すな わち設計旋回数を具体的に設定しなければならない。事実,わが国では標準となる旋回数 が規定されていないために評価用供試体を作製できないことから,客観的評価が不可能 であることが最大の問題点と指摘されている。

       このことから,本研究の具体的な目的とは次のとおりである。
    a) マーシャルランマーの突き固め数75回と50回に対応するSGCの旋回数を具体的に選定 する。
    b) マーシャル安定度とフロー値に代わる設計パラメータとその基準値を決定する。
    c) 上記のa),b)に基づく配合設計法の妥当性を評価する。

    ※Superpave配合設計については こ こ のページを参考にされたい。

  3. 格子パネルを用いた埋設ジョイントの基層用SMAの配合設計に関する研究

  4. 【背 景】
       道路橋のノージョイント化工法の一つに埋設ジョイントがある。格子パネルを用いた埋設ジョ イントは比較的性能が高く,ロングスパンの橋梁に対しても適用が可能である。そして,その 基層材料には,十分な伸縮性と水密性を確保するためにグースアスファルトが使用されて いる。グースアスファルトを使用するには,特殊な原材料や専用の製造機器,運搬車両が 必要となることから,コスト面で多くの制約を受けることになる。最近は,良質の原材料を入 手することが困難であり,また地方によっては設備の面で製造が不可能な場合も少なくない。 さらに,グースアスファルトは施工や品質管理が難しいこともあって,これに代わる基層材料 の開発が求められている。

       このような状況において,本工法の開発メーカと共同し,細粒度アスファルト混合物や開粒 度アスファルト混合物に改質剤や補強材を加えた特殊アスファルト混合物を考案し,グース アスファルトの代替材料として適用性を検討してきた。これまでの多くの試行錯誤,検討に より,ベース混合物としてはSMA(Stone Matrix Asphalt)が有望であるとの結論に至った。 しかしながら,わが国で現在運用されているSMAを,格子パネルを用いた埋設ジョイントの 基層にそのまま使用することは不適であり,施工性と埋設ジョイントとしての性能に基づい て改良を加える必要がある。

    【目 的】
       本研究の目的は,格子パネルを用いた埋設ジョイントの基層に対して使用することに特化し たSMA混合物を選定し,その配合設計法を具体的に定めることである。ここでの配合設計 とは,単に設計バインダー量を決定することではなく,骨材粒度とバインダー種類の選定を 含めた設計バインダー量を合理的に決定することである。そして,設計した基層用SMAの混 合物性状を評価して,格子パネルを用いた埋設ジョイントへの適用性についても検討する。

    【参考資料】
    1. 高橋 修,丸山暉彦,稲葉武男:格子パネルを用いた埋設ジョイントのひずみ分散機能に関する研究,No.532/V-30,pp.77-87,1996.2

    2. 高橋 修,稲葉武男:埋設ジョイントの概要と現況について,舗装,Vol.32(No.6),pp.21-26,1997.6

    3. 高橋 修,稲葉正成:樹脂補強した開粒度アスファルトコンクリートの強度特性,第31回土木学会関東支部技術研究発表会講演概要集CD-ROM,2004.

    ※格子パネルを用いた埋設ジョイントについては,開発メーカであるジャパンコンステック(株)のページを参考にされたい。

  5. 理論最大比重の計算値と実測値に関する研究

  6. 【背景】
       理論最大比重(わが国では理論最大密度のほうが一般的)とは,締め固めたアスコンに おいてその全てが構成材料(アスファルトと骨材)で占められた場合,すなわち究極的に 締め固められて空隙ゼロの状態の比重のことである。わが国では,構成材料の個々の 比重,すなわちアスファルトおよびそれぞれの骨材の比重と,それらの配合率より計算で 求めている。そして,この計算に使用する骨材の比重としては,通常の場合は見かけ比 重を,骨材の吸水率が1.5%を超える場合は見かけ比重と表乾比重の平均値を用いてい る。

       これに対して,米国やカナダの多くの州では,理論最大比重を実測によって求めている。 アスファルト混合物において,骨材がアスファルトバインダーに被覆されている状態は, 骨材の見かけ比重や表乾比重,あるいはかさ比重を実測する場合の,どの状態とも異 なっている。つまり,アスファルト混合物中における骨材は,バインダーによる湿潤状態 であって,乾燥状態でもなく,水による表乾状態でもなく,また水による湿潤状態でもな い。高温のバインダーが骨材を濡らして被覆している場合,骨材表面の微細な凹部に もバインダーが浸入,このときのバインダー浸入の程度は水場合と異なるため,上記の 見かけ比重,表乾比重,およびかさ比重では不適当である。このような考えに基づいて, j実際の設計アスファルト量で混合したアスファルト混合物を用いて行うのが,理論最大 比重の測定である。

       実測では,所定の配合で練り落とした混合物を固まる前にバラバラにほぐし,それを水 浸状態で密閉容器に投入して,真空ポンプで強制的に空気を追い出した後に水中重量 を測定する。これにより,設計アスファルト量で混合したアスファルト混合物の空隙が無 い状態での体積が求められるので,水浸前に測定しておいた乾燥重量より理論最大比 重が求められる。この方法はRice法と称されている。

       わが国では,骨材表面への浸入にアスファルトバインダーと水とで差異があるという考 え方やRice法で理論最大比重を実測することについて,あまり認識されていないのが実 状である。そのため,計算で求める方法と実測で求める方法では,どちらが真の値に近 いのか,全く検討がなされていない。理論最大比重は空隙率やその他Volimetricパラメ ータの計算に使われることから,これら2とおりの求め方によってどれくらいの差異が存 在しているのか把握しておく必要がある。

    【目的】
       上記のことから,本研究の目的は,わが国で標準的に行われている計算で求める方法 と先進諸外国で行われている実測で求める方法で理論最大比重をそれぞれ求め,その 差を定量的に評価するとともに,どちらの方法がより合理的で真の値に近いのかを検討 することである。

    【参考】
       骨材表面における微細凹部へバインダーと水の浸入の差異を考慮し,「水は浸入するが バインダーは浸入しない」部分の体積を考えて,アスファルト混合物中における骨材の状 態に即した骨材比重を有効比重(Effective Specific Gravity)という。上記の理論最大比 重を実測する方法は,むしろこの有効比重を求めるための方法として運用されている。 現時点では,有効比重こはこの方法でしか求めることができない。理論最大比重はアス ファルト配合量が変化すれば,当然変化するが,有効比重はその骨材の固有の値であ り,一度有効比重が求まれば,アスファルト配合量を変化させても,その理論最大比重 は計算で求めることができる。つまり,配合設計の際にバインダー量をいくつか変化させ て供試体を作製するが,どれか一つの配合で理論最大比重を測定しておけば,他の配 合について理論最大比重を測定する必要がない。

  7. 改質アスファルトおよびSMAの疲労特性に関する研究

    【背景】
       アスファルト舗装の長寿命化をはかるため,改質アスファルトやSMA等の特殊アスファルトコンクリートが重交通路線で活用されている。改質アスファルトバインダーを使用したアスファルトコンクリートは,ストレートアスファルトを使用したものよりも耐流動性や耐摩耗性が高いことが一般的に知られている。繰返し荷重に対するひび割れ抵抗性,すなわち疲労破壊抵抗性も改質アスファルトのほうが高いと定性的に認められているが,その程度が明らかにされていない。また一方で,アスファルト舗装の構造設計に対する性能規定に「疲労破壊輪数」という指標が導入され,アスファルト舗装の疲労破壊抵抗性を定量化することが求められるようになった。

    【目的】
       改質アスファルトを用いたアスファルトコンクリート,およびSMAの疲労特性を定量的に評価する。この場合,定量化するための物理量として疲労破壊輪数を用いる。ただし,疲労破壊輪数を直接測定することは不可能(非現実的)であるため,合理的に推定する手法について検討する。

    【参考資料】
       なし(未公開)