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 ハイテク立体倉庫火災
「安全と健康」誌 2009年3月1日発行

 プロフィール

◇ 教授 門脇 敏 (かどわき さとし)

1986年筑波大学大学院工学研究科修了、工学博士。 同年名古屋工業大学助手。同講師を経て、2000年長岡技術科学大学助教授。2006年システム安全系教授。専門は燃焼学


◇ 准教授 福田 隆文 (ふくだ たかふみ)

1979年横浜国大工学部卒、同年東洋電機製造(株)。 1987年横浜国大助手。同講師を経て、2006年長岡技術科学大学システム安全系准教授。博士(工学)。IEC/TC44国内委員副主査。



製缶工場のハイテク立体倉庫で、竣工半年後に火災が発生した。原因は、缶にポリエチレン製梱包材を巻く際に電熱ヒーターと接触し、 ポリエチレンシートに着火した状態のまま倉庫に搬入されたことであった。この火災では、スプリンクラーが作動したが、火災を防止できなかった。 スプリンクラーは法規より多く設置されていたが、当時の法規は立体倉庫のような充填(じゅうてん)率の高い状況を想定していなかった。 この火災から、最新の状況や変化に対応して、リスクアセスメントを実施することの大切さを学ぶことができる。

▽ ハイテク立体倉庫で大規模火災

平成7年11月8日深夜、埼玉県にある製缶工場のハイテク立体倉庫で火災が発生し、約23時間燃え続け、全焼した。竣工後半年の最新式の倉庫であった。 出火時に社員が現場に駆け付けると、高さ20m付近に止まった製品運搬用エレベーターの上方から炎が出ていた。初期消火を試みたが失敗し、消防署へ通報した。 このとき、倉庫に設置されていたスプリンクラーは作動したが、火災を防止できなかった。消防隊は、車両44台、消防士等410人で消火活動を行ったが、困難を極めた。 火勢は予想を上回り、退避が遅れた消防士2人と立体倉庫の技術者1人が死亡した。
この火災は、最新式のハイテク倉庫で起こり、被害が大きかったことから、自治省(当時)消防庁の専門家も加わって原因調査が行われた。 その結果、缶にポリエチレン製梱包材を巻く際に電熱ヒーターと接触し、ポリエチレンシートに着火した状態で倉庫に搬入され、エレベーターで高所まで運ばれてから延焼して火災に至ったと結論付けられた。


▽ 最新の状況に対応した想定が必要

この倉庫のスプリンクラーは作動したのに、なぜ火災を防止できなかったのだろうか。この倉庫のスプリンクラーは、法規より多く設置されており、その点での不備はなかった。 しかし、法規が想定していたのは、この倉庫のように立体的に何層も資材が入る状況ではなかった。
われわれは、ある基準を満たしているから大丈夫と考えがちである。しかし、この火災は、法規類が必ずしも最新の設備に対応していないことを示している。 つまり、法規類は既存のものを基準に作られているので、最新の設備であれば前提から見直す必要がある。 したがって、立体倉庫の設計時に、多くの製品が保管されることを想定したリスクアセスメントを行うという考えがあれば、スプリンクラーの設置数や消火活動を考慮したラックの配置などが検討されたと思われる。


▽ 労働現場でも変更の際はリスクアセスメントを

労働現場において、ある設備の性能をアップしたり、一部に新しい機能を追加したりすることが多くある。このような変更の場合、「今までの延長だから大丈夫」と考えがちである。 しかし、性能のアップや機能の追加などの変更による影響を熟慮し、リスクアセスメントを実施することが必要である。 「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」では、設備・原材料・作業方法を変更する際にもリスクアセスメントの実施を求めている。これも同じ考え方から来ていると思われる。






 
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