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「安全と健康」誌 2010年2月1日発行
プロフィール
◇ 准教授 福田 隆文 (ふくだ たかぶみ)
1979年横浜国大工学部卒、同年東洋電機製造梶A1987年横浜国大助手。
同講師を経て、2006年長岡技術科学大学システム安全系准教授。博士(工学)。IEC/TC44国内委員会副主査。
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▽ 試運転中にローターが破損ーその1
昭和45年10月に、重さ約50t、長さ7mの33万kW発電機用蒸気タービンローターが、製造工場におけるオーバースピード試験中に破損し、
死者4人、重軽傷者61人に及ぶ大きな事故が発生した。
ローターは大きく4片に分かれ、@空中に放出され880m飛んで海中に落下、A1,500m飛んで山腹に落下、B現場床に突き刺さり、
Cさらに1つは工場内を転がり、また、数多くの小さな破片も飛び散って、周囲にいた人を死傷させた。原因は、その後の調査で内部の材料欠陥であることが判明した。
▽ 試運転中にローターが破損ーその2
昭和47年6月に、60万kW発電機用タービンが、発電所への据付け時のバランス調整と試運転を実施中に3カ所で破損し、継ぎ手やタービン翼が最大で380m飛ぶ事故が発生した。
また、内部に入れてあった水素ガスに着火し、火災も発生した。
定格速度までのバランス調整確認は終了しており、事故は、それ以上の回転数での試験を行っているときに発生した。幸い人的な被害はなかった。
原因は、@バランス調整が十分でなかったため、試運転中に振動が起こり、それが起因となって軸受の一部が破損し、
Aその軸受が機能しなくなったことでローター軸の振動はさらに大きくなり、B軸受、ハウジングやそれらを止めているボルトが耐えきれなくなったことである。
▽ 試運転は危険があると考え万全の体制を
これらの事故のローターはそれぞれ別のメーカーのものであり、原因も異なるが、ともに大型回転機の事故であり、回転数が高いときに持っているエネルギーのすさまじさを実感させる。
試運転は設計した機能を満たすことを確かめるためとともに、安全上の問題がないかを確かめるために行う。つまり、まだ安全性が確認されていないから行うのである。だから、試運転は、
危険があると考え、それに対する十分な準備をして行うことが必要である。
試運転における危険は何も大型機だけの問試題ではない。砥(と)石を交換したときには、バランスをとり、そして回転試験を行う。この作業を何回も行っているうちに、
「まさか破損することはないだろう」と思うようになっていないだろうか。また、油圧・空圧を利用する設備であれば、吹出しや破裂があることを考えておかなければならないだろう。
さらに、試運転は何も新規のものだけではなく、保全後に行うものもある。慣れた設備であっても、そこにある危険源を十分意識し、試運転に臨みたい。
なお、その1の事例の事故後、その事業場では、試験は地中に掘ったピット内で行い、かつ、もし破損が起こっても破片が飛散しないような蓋(ふた)を設けている。
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