長岡技術科学大学は、実践的・創造的能力を備えた指導的技術者の養成をめざす、大学院教育を重視した工学系の高等教育機関です。主として高等専門学校卒業者を学部3年次に受け入れ、高校、専門学校、留学生等をさまざまな年次に受け入れる、特徴的なカリキュラムを持っています。
原子力システム安全工学専攻では、大学院修士課程の教育・研究を通じて、機械、電気、電子、物質、材料、建設、環境、生物、情報などの基盤的な技術領域を統合し、“システム安全”というコンセプトを使って原子力安全という難しい課題に取り組んでいます。
講義では、原子力・放射線に関する専門知識を、学部レベルの基盤的知識と結びつけながら幅広く学習します。また、研究室における修士論文の研究やセミナー、実験・実習・演習によって、実践的な研究開発能力を身につけます。
近年の急速なグローバル化に対応するため、グローバルな視点で地域の強みを見出して国際競争力を持った新産業を創出できる、技術イノベーションを起こす人材が必要とされています。
安全確保技術という切り口で見ると、製品の信頼性や品質を高めることで事故の原因を取り除くという従来型の対策に加え、事故に至るまでの多様なシナリオを事前に注意深く考察し、事故の影響緩和対策や復旧対策を備えておくことの重要性が認識されるようになりました。系統だった方法で事故シナリオの頻度や影響を十分に小さくすることを「システム安全」といい、これが国際標準的な安全思想になりつつあります。本学では、システム安全のコンセプトに沿った技学教育が必要であると考え、2006年4月から専門職大学院・システム安全専攻で研究教育を行なってきました。
また本学では、原子力・放射線分野の研究教育も盛んです。そこで、原子力分野にシステム安全の考え方を取り入れた研究教育を目指し、2008年から文科省原子力コア人材育成事業の支援を受けて教育プログラムの検討を行いました。そして東日本大震災の教訓も踏まえ、2012年4月に大学院工学研究科修士課程・原子力システム安全工学専攻を開設しました。原子力システム安全工学専攻には、地域と連携しつつ、国際標準の安全の考え方を原子力分野に適用することで、未来の原子力安全に対応できる人材育成を行うことを期待しています。
このように、本学は、原子力安全の分野でも、高度な技学力(=現場力+研究力+創造力+実践力)を持ち、新しい分野に挑戦するタフなグローバル技術者を育てています。
修士課程原子力システム安全工学専攻は、東日本大震災後の2012年4月に設立された、比較的新しい専攻ですが、本学における原子力・放射線と関連した研究自体には長い歴史があります。
本学では、1976年の開学直後からパルスパワー・加速器を用いた研究や、放射性同位体を用いた研究が精力的に進められてきました。学内には、極限エネルギー密度工学センターとラジオアイソトープセンターが組織されており、学内の様々な専攻の教員が活用しています。また、これらの設備を利用した共同研究も活発に行われており、国内の大学・高専・企業はもとより、海外の研究機関にも利用されています。
このような好条件を生かし、本専攻は、原子力安全確保の考え方に基づいて、市民との技術コミュニケーションを促進し、グローバルにも活躍できる、これからの日本に必須の実践的原子力人材の育成を行います。カリキュラムは、高等専門学校の本科や専攻科を含め、工学系の大学学部レベルまでに学習した基盤的工学(機械、電気電子、情報、経営、材料、建設、環境、生物など)の知識の上に、システム安全と原子力工学の専門知識を身に付けるように構成されています。加速器や放射性同位体を用いた実験・実習はもとより、さまざまな機会に原子力関連施設へ出向いて、実践的な学習を行います。希望する学生には、長期インターンシップの機会もあります。また2016年度からは、原子力規制庁の人材育成プログラムにも採択されています。
取り組むべき研究課題は数多く、幅広い専門性をもった学生が望まれています。皆さんの挑戦を心よりお待ちしています。
c Copyright 原子力システム安全工学専攻 / Department of Nuclear System Safety Engineering