鋼橋の腐食に関する研究

数値シミュレーションによる橋梁断面周辺の飛来塩分の推定

我が国では、高度経済成長期の1960年以降に多くの橋梁が建設され、経年劣化に伴う腐食損傷事例が発生しています。そのため、近年では構造物の建設から維持管理・撤去までにかかる費用、いわゆる「ライフサイクルコスト(LCC)」を考慮した設計や維持管理が重要となっています。

鋼橋の腐食要因の一つとしては、橋梁の各部材に付着する「塩分」が挙げられます。この塩分には、海から風によって飛ばされる「海塩粒子」と、積雪寒冷地において冬期間に路面上に散布される「凍結防止剤」があります。

鋼構造研究室では、異なる環境下にある橋梁を対象として、鋼桁部への塩分の飛来量を計測し、塩分の飛来量と鋼材の腐食の関係について調査しています。さらに、数値シミュレーションを行うことによって、塩分の飛来状況の再現および維持管理への適応について検討しています。

腐食した部材の健全性評価

鋼橋の各部材の腐食は、上述のような塩分の付着や雨水の漏水・滞水によって発生します。特に、部材溶接部やガセット部、ボルト継手部などでは塩分や雨水が滞留しやすく、角部を多く有するため塗装膜厚を確保することが困難であることから、腐食が進行しやくなっています。部材に腐食損傷が生じた場合、その部材の健全性は損なわれ、橋の安全性が低下します。そのため、腐食した部材の応力評価は、構造物の維持管理において重要な課題といえます。

私たちの研究室では、FEM解析を用いて各部材の腐食モデルを再現し、腐食が進行した場合の部材の健全性について評価・検討を行っています。