当研究室は,流体の性質に合わせて風車班とレオロジー班の2つのグループに分かれています.それぞれのグループは研究対象によってより詳細なテーマに分けられます.
  • 風車班 : 水や空気などの低分子液体を対象とした流体関連振動の研究
  • レオロジー班 : 界面活性剤,液晶,高分子溶液などの固体物理では扱わない非ニュートン流体の流動現象に関する研究

風車班・渦励振

十字交差系と縦渦励振・ギャロッピング

水や空気などの流れの中に物体を置くと,図1のようなKarman渦とよばれる交互に流出する渦が物体後方に形成されます.この渦は物体に対して流れに垂直な方向の力を周期的に作用させるため,物体の固有振動数と一致すると共振現象により振動を引き起こします.煙突や橋梁などの柱状や帯状の構造物ではこの振動により破壊に至ることがあるため,このような構造物を建設する際には季節風など予期される風によるKarman渦と共振しない形状にしなくてはなりません.

高橋研究室風車班では,柱状物体の下流に十字交差するように別の物体を置くことで,Karman渦による振動を抑制することに成功しました.また逆に2つの柱状物体の隙間が小さいときKarman渦ではない別の渦による振動が発生することも発見しました.この新たな渦は流体の流れ方向を回転軸としているので「縦渦」とよびます.縦渦は従来研究されてきたKarman渦よりも大きな流体力がかかるうえに振動する流速範囲も広いため,縦渦による振動は風力・水力振動発電への応用が期待されています.柱状物体間の隙間sを後方の柱状物体の直径dで割った,隙間比s/dというパラメータにより2種類の縦渦(図2)が流出します.0≦s/d≦0.25の場合にはTrailing渦,0.25≦s/d≦0.5の場合にはNecklace渦が流出します.しかし,Necklace渦は水中で一定の流速を超えると消失してしまいます.この現象はTrailing渦には見られず,Necklace渦特有のものであることが,今までの研究からわかっています.

近年,縦渦により渦励振以外の振動現象であるギャロッピングが発生することを確認しました.渦励振が周期的なTrailing渦により発生させられる現象であるのに対し,ギャロッピングはNecklace渦の定常的な力によって発生します.ギャロッピングは渦励振よりもより高流速で発生し,大きな振幅の振動となります.縦渦のギャロッピングにおいて特筆すべき点は円柱でも発生するということです.通常,回転対称でない角柱でのみ発生するとされていますが,縦渦によるギャロッピングは揚力の発生原理が異なるため円柱でも発生します.風洞での実験により縦渦の渦励振,ギャロッピングの特性を解明します.


円柱後方に流出するkarman渦
図1 円柱後方に流出するkarman渦
円柱後方に流出するkarman渦
図2 Trailing渦(左,0≦s/d≦0.25)とNecklace渦(右,0.25≦s/d≦0.5)の流出イメージ