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システム安全系長メッセージ

システム安全系 系長・教授
阿部 雅二朗

 システム安全工学専攻のHPをご覧いただきありがとうございます。本専攻は、安全に関わっておられる、これから関わりが深くなる、あるいは興味関心があるなど、安全について、学修、研究を希望される社会人の皆様、一般学生の皆様に広く門戸を開いています。以下、本専攻の設立等経緯、これから実践を展開することなど、についてお話いたします。

 2006(平成18)年、国際標準と言えるシステム安全の考え方を基盤にした高度な実務・実践能力を養成すべく、技術を科学することを標榜する長岡技術科学大学の大学院に経営、マネジメント系の科学をも包含して教育研究する技術経営研究科が設けられ、そこに専門職学位課程のシステム安全専攻が設置されました。同年4月は改正労働安全衛生法が施行され、リスクアセスメントの実施が努力義務化されましたときであること、安全関係者であればご承知の通りです。システム安全専攻ではその前身である工学研究科の社会人キャリアアップ機械安全コースと合わせ200名を超える方々が研鑽を積んで修了され、多くの方々が安全関連の規格等開発、フォーラム等において主導的に活躍されています。身に着けた安全に係る高度な専門能力が継続していることを保証する制度も渇望され、本学はシステム安全エンジニア等の安全に係る資格制度の設立を主導しました。本制度は厚生労働省の通達(2014(平成26)年4月)にその有用性が明記*)されています。

 システム安全専攻(現、システム安全工学専攻)では、システム安全を『ハードウエア・ソフトウエア、人、法・規範などの複合体(システム)において、人間の誤使用や機械の故障などがあってもその安全を確保するために、設計/製造/使用などライフサイクルのすべての段階で、危険につながる要因を事前に系統的に洗い出し、その影響を解析及び評価して適切な対策を施すべく、安全技術とマネジメントスキルを統合して応用する手法の体系』と定義しています。このシステム安全の実践、持続する進化への期待は、技術の高度化や複雑化、事業活動の大規模化、組織や企業の活動への社会的諸要請の強まり等に伴い増大しています。職場の安全確保、消費者等への安全な製品・サービスの提供等は、組織や企業の存立を支える前提条件であるとともに、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための必須の条件ともなっています。

 イノベーションが求められる今日、これから、経験的な安全構築が困難な新技術を社会に実装するには、より論理的な安全構築による規格の制定が必須となっています。わが国では、従来の欧米規格へのキャッチアップ主体から脱却し、世界をリードする、わが国発の安全に係る国際規格を制定することが望まれています。この遂行、実践には、その適用範囲で予測される各種現象等の本質的な理解とメカニズムの解明も不可欠です。既存の規格においてもその内容を的確に把握して運用するには深い科学的な洞察力が必要です。これらの遂行においては、諸課題を解決する実務能力に加え、精深な学識、論理的思考力及び創造力、つまり研究能力を有する人材が、重要な鍵を握ります。これらの能力を有する人材の養成は、わが国発展のための喫緊の課題となっており、大学等での実践が望まれています。

 本学に上記の大学院技術経営研究科システム安全専攻が設置された当時は、国際標準であるシステム安全の考え方をわが国の産業界に広めることがその最重要ミッションでした。本ミッションを、実務能力を培うことに主眼を置いた専門職学位課程(専門職大学院)にて果たしてきました。しかし、昨今においては、急速な技術革新の中で新たな技術に対応した安全の研究も求められています。それに必要な研究能力、創造能力を持った人材の育成が大学等に要請されています。このような要請に応えるため、「持続可能でより安全・安心な社会の構築への貢献」をビジョンに掲げ、新たなミッションを、「異業種に加え異経験の交流による相互啓発を促すべく、社会人の方々、さらに一般学生へも門戸を開き、より多様な人材を対象に、安全技術とマネジメントスキルを統合して応用するシステム安全の考え方に基づき、安全の諸課題や新しい技術に対応できる精深な学識、論理的思考力及び創造力、つまり研究能力、ならびに、安全の諸課題を解決できる卓越した能力、つまり実務能力を有する人材を養成すること」に定めました。専攻HPトップページの図には、このビジョン及びミッションのイメージを示しています。ご参照下さい。

 新ミッションを着実に果たすため、2021(令和3)年度より、大学院技術経営研究科専門職学位課程は、学理構築と実践の不断のフィードバックを推進している大学院工学研究科修士課程へ移行し、新たにシステム安全工学専攻となりました。移行後の新専攻では、安全に係る実務能力を育成してきた教育を継承しつつ、イノベーションを先導する研究能力を育成する教育を推進しています。2023(令和5)年3月には本移行後初の修了生が誕生し、身に着けた研究及び実務の能力を改めて各所で活かし展開することを開始されています。本専攻の教育はリカレント、リスキリング教育推進の一翼をも担っています。2022(令和4)年9月には、本専攻は安全工学のリカレント教育の発展に寄与した業績が顕著であると認められ、公益社団法人日本工学教育協会様より工学教育賞を授与されています。

 システム安全工学専攻で養成される人材は、研究能力と実務能力を有する安全の専門家として、安全を基盤としたイノベーションを先導することになります。グローバル社会をリードする国際安全規格の制定の原動力ともなり、わが国、世界のさらなる発展に貢献することになります。社会人、一般学生の皆様、システム安全工学専攻で学ばれ、進化するシステム安全の和の一員として、わが国の、さらには世界の安全の担い手として共に協働する道を歩みませんか。関係者一同、志ある皆様の参画を心より歓迎いたします。

2014(平成26)年4月の厚生労働省からの通達で、機械による労働災害を一層防止するために、設計技術者、生産技術管理者に対する安全教育(それぞれ30時間(ただし機械安全設計に係る電気・制御技術者は40時間)、15時間)が求められるようになりました。同時に同通達のなかで、システム安全エンジニアの資格を有する者はこれらの安全教育のカリキュラムの全てについて十分な知識を有する者としてみなされています。